道の駅だけで農家は生活できる? 直販の売り上げと現実を解説

Q:道の駅での売上だけで生活できますか?
A:難しいです。それでも、道の駅は農家さんにおすすめしたい販路です。

道の駅は農業経営の味方

農家にとって、取り組みやすい直販の1つが道の駅です。これまで系統出荷のみだった農家や新規就農者にとって、道の駅を利用することで経営はどのように変わるのか。具体的な数字を上げながら解説します。

実際、どれくらい儲かるのか――売上高1000万円が1つの天井

道の駅の売上規模の現実を見ていきましょう。

道の駅1駅あたりの平均売上高は2.4億円(2015年)です(辻紳一『道の駅の経営学』)。仮に100事業者が納品しているなら、1事業者あたりの年間販売額は240万円の計算。年間120日出荷するとすれば、1日の売上高は2万円です。
もちろん、道の駅ごとに売上高は全く違いますし、人気商品だと他の農家・事業者に圧倒的な差をつけることも可能でしょう。ただ、平均的なボリューム感としてはそれくらいだと思われます。

売場面積から考えても、同じような結論に至ります。道の駅は大きな施設ではありますが、トイレや休憩施設、案内所なども整備されているため、販売の面積は限られています。
手元の資料によれば、特産販売所の面積の中央値は242㎡、農林水産物に限れば122㎡が中央値です(徳島市「『道の駅』の敷地面積・施設面積」)。
1畝を少し上回る程度のスペースで、たくさんの農家が直売を行っているイメージですね。

出品者がどれだけ努力を重ねても、売上高については比較的早い段階で天井が見えてきます。その天井というのは、個別ケースによりますが、年間販売額でいえば1000万円あたりでしょう。
道の駅に詳しい研究者は、「農産物とその加工品で年間1000万円以上も売り上げている農家もあった」(関満博、酒本宏編『道の駅』)と述べています。やはり売上高1000万円は1つの天井であり、道の駅を使う農家さんにとっての目標値であると考えられます。

売上1000万円だと、利益はどれくらい?――経営を数字で考える

実際に手元に残るお金はどれくらいなのでしょうか。モデルケースとして、道の駅で1000万円を売り上げたときの利益額を概算してみましょう。

道の駅でよくある契約形態としては、①売上高に対しては販売手数料がかかる、②売れ残ったら返品・廃棄になる(消化仕入れ)があります。道の駅の中にはJAと同じように全量買取をしてくれるところもあると聞いたことはありますが、基本的には①②の両方を農家が負担する形が一般的です。

ここでは、手数料率15%、売れ残りは廃棄(消化仕入れ)で計算してみましょう。

大前提として、陳列した農作物のうち、多少は売れ残って廃棄されると考えるのが自然です。販売額1000万円を稼ぐためには、だいたい1100万円から1200万円分の農作物を出品する必要があります。
種苗費や包装資材費、燃料費などの変動費は、その1100万円や1200万円に対して掛かると考えると、直感的に理解しやすいです。
つまり、販売手数料を除いた変動比率を仮に35%とした場合、420万円となります。

一方、実際に入金される金額は、販売額1000万円から手数料15%を引いた金額です。農家の口座に入るのは850万円です。

よって、道の駅を使うことで増える利益額は、850-420=430万円です。

道の駅だけで生活できるか?

430万円なら、一見すると生活は十分できそうな数字に見えます。
ただ、結論を述べると、それだけで生活することはかなり難しいと思われます。

そもそも、430万円というのは、売上高から変動費のみを引いた値。専門用語では限界利益と言います。
実際の経営では、その限界利益から固定費が引かれることになります。

そして、農業経営において、固定費の負担は重くなりがちです。農機、軽トラ、ハウス、倉庫、予冷庫などに加え、社員・アルバイトの給料も固定費に含めて考えるのが通常でしょう。
野菜を作っている個人農家の場合、社員・アルバイトの給料や減価償却費などの固定費は売上の30%くらいになることが多いかと思います。販売額で1000万円規模の農家なら、概ね300万円くらいはかかるでしょう。
手元に残るお金は、430-300=130万円くらいになるはずです。

実際には補助金収入もありますが、就農直後でない限りは100万円前後という農家も多いです。先ほどの130万円に100万円を足したら230万円。そこから消費税、法人税・所得税、保険・年金など諸々を支払います。手元に残るのは100万円台後半だと思われますが、これで生活するのは難儀だと思います。

もちろん、変動比率や固定費額は概算であって、農家ごとに金額感は変わってきます。たとえば稲作農家であれば、固定費は重くなりがちで、変動費率は少し低めです。また、コメは長期間の陳列にも耐えられるので廃棄率は大幅に下がります。
野菜農家でも、ハウスがメインだと固定費は当然高くなります。露地メインであれば、単収が伸びづらいので売上高に対する変動費率は高めになります。
この辺りは、ご自身の状況に照らして計算してみてください。

道の駅だけで生活をするのは難しいけれど、それでも道の駅をおすすめする理由

道の駅だけで生活できるかというと、かなり厳しいだろうというのが率直な意見です。

ただし、それでも道の駅の利用は、農業経営アドバイザーとしてはおすすめです。
なぜなら、消費者の声を直接聞けることに加えて、利益率が比較的良い販路の1つだからです。

消費者の反応がダイレクトに返ってくる

道の駅との付き合い方として、
「どのように品質を上げていけば、お客様に手に取ってもらえるのかを研究する場所」
として位置付けるのは一案です。

ここでいう品質というのは、農作物の種類や見た目・味だけでなく、包装の仕方、シールの貼り方、陳列方法、配送のこだわりなど、お客様に訴求しうるすべての要素を指します。

お客様にどうすれば喜んでもらえるかを考え、
実際の商品・展示にこだわり、
改善を積み重ねていく。

結果が目に見えるのが道の駅の良いところです。いわゆるPDCAの起点として道の駅を考えておくのが良いでしょう。

何より、「ありがとう」の言葉が届くというのは、予想以上に嬉しいものです。
この辺りも含めて道の駅は魅力的だと思います。

道の駅をきっかけに、利益率の高い販路を開拓する

販売をベースに農業経営を考えるときには、売上高と利益率の両軸で考えると分かりやすいです。

売上高だけを追求して利益率を度外視したら、赤字体質に陥ってしまいます。
しかし、利益率だけを追い求めていても、売上高は上がりません。

道の駅は、売上高は伸ばしづらいけれども、利益率を取りにいける可能性のある販路です。

売上高も利益率も高い取引先というのは、そう都合よくは見つからないもの。
特に利益率が高い販路は、受け入れてくれる数量は往々にして少ないです。

売上高が大きい販売先はお得意様として大切にしながら、
利益率が高い販売先を伸ばしていくことが農業においてはオーソドックスな経営戦略です。

その点、利益率が比較的高い売り先の1つとして、また他の高利益率な販路を開拓するきっかけとして、
道の駅を捉えるのが良いでしょう。

なお、全ての道の駅で高利益率が取れているかというと、その限りではないのが現実です。
出品している他の農家に引きずられる形で値段が下がってしまい、採算ラインすら下回ることも。
道の駅に出品する際には、収支分析は必ず行うようにしてください。

道の駅は、販路の1つとしては絶好の売り場所

結論としては、道の駅での売上だけで生活をするのは相当難易度が高いと思います。

一方で道の駅は、利益率とやりがいのある販路です。
大きな売上を立てるのは難しいかもしれませんが、コンサルタントとしてはおすすめしたい販路の1つです。

ということで、直販をこれから始める農家の方は、道の駅をぜひご検討ください。
道の駅で通用する方法を見つけられれば、他の販路を開拓するときにもきっと参考になるはずです。
自分なりの勝ちパターンを、道の駅で見つけましょう。