スーパー・飲食店に営業したい農家さんへ 取引開始までの流れを解説

直接取引を目指す農家さんへ

JAや卸業者を挟まずに、スーパーや飲食店と直接取引したいと思ったことはありませんか?
直接取引を志す農家さん向けに、事前準備や営業のポイントも含めて解説します。

直接取引の魅力

直接取引には多くの利点があります。
・単価を上げるきっかけになる
・販売手数料を払わずに済む
・販路の複線化でリスクが分散する
・お客様からのフィードバックが得られる

一方で、実際に営業を始めようとしても、
・何を準備すればいいのか
・どこに営業すればいいのか
・どう話しかければいいのか
などが分からず、二の足を踏んでしまうことも多いです。

スーパーや飲食店などと直接取引を始めるまでの流れを、現場の実務を交えながら解説します。

営業前に準備しておくべきこと

「よし、営業しよう」

と思っても、準備不足のまま動くと空振りに終わりやすいです。

まずは、営業前に整理しておきたいポイントを確認します。

取引相手を具体的に想定する

「誰でもいいから買って欲しい」という気持ちは分かります。
ただ、ビジネスなので、相性というものはあります。
相手を想定して準備をしておかないと、相手の貴重な時間を奪うだけで終わってしまいます。

そこで、
自分が取引したいのはどんなお店なのか、
逆に、相性が合わないお店はどんな特徴なのかを考えてみましょう。

・どれくらいの量・頻度を求めるお店か
・定時・定量・定質・定価格の「4定」をどれくらい重視するお店なのか
・顔が見える野菜を求められるのか
・有機JAS認証は求められるのか
などです。

「誰でもいいから買ってほしい」と売り込みに行くよりも、
「あなたに買ってほしい」と理由を付けて話せるほうが、説得力がありますよね。

自社分析

自社の強みを分析しておくことも重要です。

分析にあたっては、
・生産量・出荷時期
・こだわり
・組織体制
・出荷・調整のキャパシティ
このあたりは最低限抑えておきましょう。
圃場の中だけでなく、経営全体の視点から分析することが重要です。

また、その分析結果は言語化しておきましょう。

「品質を重視しています!」
「安定して出荷できます!」
だけでなく、
・朝採り
・調整工程
・従業員数
・組織図・役割分担
など、具体的に書き出すことが、後々の強み訴求につながります。

値段設定

販売希望価格については、上限と下限を決めておくのがポイントです。
上限というのは、いくらで売れたら理想、という値段。
下限というのは、この単価を下回るなら取引をしない、という値段です。

この計算をせずに営業を始めてしまうと、いざ取引が始まったら赤字だった、となってしまいます。
何のために労力を割いて直接販売をしているのか、という事態になりかねません。

また、希望単価を伝える際には、「●●円でお願いします。なぜなら…」と理由まで付け加えられると説得力があります。
始まる前に価格を自分主導で想定しておくことは、直接販売では特に重要です。

※交渉術としては、希望単価はこちらからは提示せずに相手に言わせるのがセオリーです。相手が値段を提示してくれるのを、辛抱強く待ちましょう。希望単価を伝えるのは、我慢比べで相手の方が上手だったときだと考えてください。

資料づくり

まずは1ページのチラシのようなものでもOKです。

自社の強みや農作物の訴求ポイント、生産・出荷体制などをまとめておきましょう。

CANVAなどのソフトを使えば簡単に作れます。
要点がまとまっていれば、数時間あればきれいな資料が完成します。

(Chat GPTで出力しました。盛り込むべき内容を指示する必要はありますが、見栄えだけでいえば十分でしょう)

口頭説明だけでなく、形に残る資料があるかないかでは営業先に与える印象は大きく変わります。
営業に繰り出す前に、ぜひ作っておいてください。

販売先はどう探す?

では、実際に営業先はどう探せばいいのでしょうか。
取引先ごとに解説します。

道の駅

直接販売に初めて興味を持ったなら、まずは道の駅(やJAの直売所など)を検討してみてください。
道の駅での販売についてはこちらを参照

道の駅は、取引開始のハードルは比較的低いです(駅長さんも、直売未経験の農家さんへの対応も慣れています)
大きな売上にはつながりづらいものの、まずはやってみたいという方にはおすすめの販路です。

地元のスーパー

全国チェーンのスーパー(いわゆるGMS)に比べて、地域密着型スーパーへの営業は比較的容易です。
特に、
地産地消を強化している
地元農家コーナーがある
などのスーパーは狙い目です。

地元スーパーの中には、
「地産地消コーナーを設けたいけれど、農家との繋がりがないから諦めている」
といったケースもあると聞いています。
一般的に営業は嫌がられるものですが、地域密着のスーパーであればむしろ歓迎されることも

店長やバイヤーとの共通の知り合いがいれば紹介してもらうのが良いのですが、
全く縁のない状態から営業をして契約を勝ち取った農家もたくさんいらっしゃいます。

まずはGoogleマップを開いて、地域密着型のスーパーをリストアップしてみましょう。
その上で何店舗かを実際に訪れて、
・どんな農作物を置いているか
・価格帯はどうか
を確認すると、相性が見えやすくなります。

何となくウチに営業にきたのか、厳選した結果ウチを選んでくれたのかは、相手にとってすぐに分かります。
市場調査は手を抜かずに行いましょう。

ちなみに、スーパーの中には農家との直接取引はせず、卸業者を通してしか取引をしてくれないこともあります。
ただ、そうしたスーパーであっても営業が無駄になるわけではありません。店長やバイヤーが気に入ってくれれば、出入りの卸売業者を紹介してくれることもあります。

「ここに卸したい...!」と強く惹かれるスーパーがあるのなら、
ご縁を信じて営業を掛けてみましょう。

飲食店

飲食店は、規模の小さな農家にとっても参入しやすい販路です。
特に、
・珍しい野菜
・高品質な野菜
・特徴のある栽培方法

などは評価されやすいです。

また、野菜だけでなく農家さんご自身の人柄も重要です。
オーナーシェフが「この農家から買いたい」と思ってくれる可能性もあります。

ただし、飲食店は忙しいです。
営業時間中の飛び込み営業は、対応してもらえないことも多いです。

そこで、
・SNSで接点を作っておく
・事前に連絡をして営業の許可を取る
・営業時間は避ける。特に混雑時間帯はNG
などの配慮は重要です。

実際の商談では、
「どれくらい必要ですか?」
「どんな野菜・果物が欲しいですか?」
と、相手のニーズを聞く姿勢も大切です。

飲食店の大多数は、個人経営です。
相手の話を敬意を持って聞くことは非常に重要です。
「会話時間は相手7割、こちら3割」くらいがちょうど良いです。

コラム:直接取引の欠点

冒頭で、直接取引の利点を上げました。

・単価を上げるきっかけになる
・販売手数料を払わずに済む
・販路の複線化でリスクが分散する
・お客様からのフィードバックが得られる

ただし、全ての農家がそうした利点を享受できるわけではありません。
長所の裏側には、短所も隠れています。

・単価を上げるきっかけになる

実際に上げられるかは交渉次第です。
たとえば市況が良くてJAへの出荷価格が上がったとしても、直接取引の値段が上がるとは限りません。
その都度の交渉が必要になります。

実務では、値上げには応じてもらえないけれど、不当な値下げもないという声をよく聞きます。
単価を上げるよりも、単価を安定させることを目的として直接取引をする農家も多いですね。

ただ、最近は農水省のコスト指標が整備されたので、交渉の難易度は少し下がっているとは思います。

・販売手数料を払わずに済む

販売手数料というのは、農協や市場が、あなたの代わりにマーケティングをしてくれている対価です。
いわば外注費ですね。

系統出荷から直接販売に切り替えるというのは、外注している作業を内製化するということです。
販売のための時間もお金も、想像以上に掛かります。

外注を内製化することでコストダウンにつながるかどうかは予め計算できる部分です。
概算を出してみることをおすすめします。

・販路の複線化でリスクが分散する

販路をいくつも持っておくことが前提です。
しかし、販売先との関係を維持するのは簡単なことではありません。

初年度は良い関係だったとしても、徐々に、あるいは突然に、取引が切れてしまうことは、よくあります。
もともと溜まっていた不満が、価格改定の交渉のときに噴出。そのままご縁が切れてしまった。
そんな光景は、皆さんも想像できるのではないでしょうか。

・お客様からのフィードバックが得られる

フィードバックをいただけるので、自分の作物の強みが何か、どこを改善していけば良いのかが分かります。
あと、お客様からの「ありがとう」の一言は、予想以上に嬉しいものです。

ただ、フィードバックの中にはお叱りの言葉もあります。理不尽な要求やクレームもあるでしょう。
精神的に喰らってしまう人もいます。

実際の取引で起きやすいトラブル

システム化された系統出荷とは違い、直接取引ではトラブルはつきものです。

取引先から
・明日は不要になった
・数量を半分にしてほしい
などと突然言われることも。
支払い遅延や不払いのリスクもあります。
契約書を交わしたところで、トラブルを完全に防止することは困難です。

逆に、
・納品ミス
・品質不良
・数量不足
などでお客様にご迷惑を掛けてしまうこともあります。

直接取引の場合には、特に最初は、迷惑を掛けてしまっても「お互い様」だと思います。
関係性は一日にして成らず。何年もかけて育てていくものだと思います。

多少の無理は聞いてあげて、借りを作るくらいの感覚で付き合っていきましょう。

おわりに

直接取引には魅力が多い一方で、営業・交渉・クレーム対応など、圃場外の仕事が大きく増加します。

・営業や交渉などの面倒事は絶対に避けたい
・大量生産が強み
・出荷量が極端に不安定
・系統出荷で利益を十分に取れている
などの場合には、直接取引を無理に広げない方が良いケースもあります。

逆に、たとえば、
・人と話すことが好き
・農業を「経営」したい
・改善を繰り返して成長するのが好き
こうした農家さんは、直接取引との相性が良いかと思います。

大切なのは、「周囲がやっているから」「先代がそうだったから」ではなく、
自分の経営に合った売り方を選ぶことです。