銀行からコンサルタントが送られてきたら、手遅れですか?

Q:銀行担当者から、コンサルタントを任命したいと言われたんですが、もう手遅れということですか?
A:いいえ、手遅れとは限りません。ただ、今のままだとまずいかもしれません。

銀行からコンサルタントがやってきた

銀行からコンサルタントが送り込まれてくることは、実際にあります。銀行からお金を借りたら、銀行員と定期的に面談をします。そのときに、「一度、コンサルタントに見てもらったらどうですか?」と提案されることがあります。「おたくの財務が傷んでいるから」と直接言ってくるかは担当者次第ですが、コンサルを送り込もうとするのは財務状況に懸念があるからです。コンサルフィーは銀行持ちのこともありますが、会社持ちのこともあります。

銀行がコンサルタントを送り込む主な目的は経営改善です。経営状況が悪くなって一番困るのは社長さんですが、お金を貸している銀行もすごく困ります。だから、貸した金をきちんと返し続けてもらえるように銀行が経営にテコ入れする形ですね。ちなみに私もコンサルタントとして、そうした案件に関わることがあります。

経営者としては、銀行からコンサルタントが送り込まれるのは気分が良いものではないです。そうした経営者はコンサルタントに頼らず自分で経営できるという自信を持っている場合が多いので(コンサルタントが入っていれば、窮状に陥る前にこちらから手を打てていることが多い)、多くの場合には警戒心を持ってコンサルティングに臨むものだと思います。

ただ、そうしたコンサルタントは経営にとって結構役に立つので、提案されたら受け入れるのが(銀行との関係上も)良いと思います。ちなみに、コンサルタントを送り込んだからといって、銀行が経営権を奪い取ってやろうとか経営者をすげ替えてやろうとかはあまり聞きません。それがあるとすれば役員を送り込んでくる場合ですが、農業でそういったケースは稀だと思われます。

銀行からコンサルタントが送られるのはどのような場合か

銀行からコンサルタントが送られてくるというのは、普通に考えると、望ましい財務状況ではないケースが多いです。どれくらいまずい状況なのか。少し整理してみましょう。

1 問題は特にないケース

大前提として、銀行員は忙しいので、各企業の状況を事細かに把握しているわけではありません。なので、コンサルタントはまずは経営状況のヒアリングや実地調査、財務分析などを行います。

その結果、意外と大丈夫そうだったといったケースもありえます。この場合は、経営者側からの説明がうまくいっていなかっただけです。銀行の思い過ごしだったということで、喜ばしいケースだと言えるでしょう。

2 経営改善が必要なケース

2番目の想定です。おそらくこれが一番多いのですが、コンサルタントのアドバイスをふまえて経営改善をしていかなければならないことがあります。

よくあるのが、このままだとジリ貧だから、売上を伸ばす方策や固定費を削る施策を実行しなければならないと診断されるケースです。コンサルタントは現状分析だけでなく解決策(いわゆる改善計画)も提案してくれるので、コンサルタントが作成したその改善計画を実行に移していくことになります。強制力があるわけではないのですが、コンサルタントが提案するのは「まあ、そうだよね」と納得感のある計画なはずなので、普通はそれに沿って経営を立て直すことになります。

※ 「もし、納得のできない提案だったらどうするのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そういったことはあまり起こりません(噂はたまに流れてきますが)。銀行としても「銀行さんが送り付けてきたコンサルのせいで経営が傾いた」なんて貸出先に言われたら面目丸潰れなので、きちんとしたコンサルタントを送ってきます。それでも納得できなければ、その旨を銀行側に伝えればOKです。

コンサルタントの関わり方もさまざまです。コンサルタントが立てた計画通りに進んでいるかを半年・1年くらいかけて確認して、うまくいっていなければ応援してくれるコンサルタントもいます。計画だけ立てて去っていくコンサルタントもいます。この辺りは契約によります。

3 銀行を巻き込んで対策を練る必要があるケース

銀行がコンサルタントを送るときは、大抵は借入金が大きすぎるときです。コンサルティングをふまえても、どう考えても借入したときの計画通りには返済は出来なさそう、ということもありえます。このまま約定返済を続けたら数ヶ月後には資金ショートすることが目に見えているような状態ですね。

そうしたときには、銀行に返済を待ってもらう(返済を先延ばしにすることを「リスケ」といいます)交渉をします。リスケのためには経営改善計画書という大掛かりな書類が必要なので、コンサルタントのサポートを受けながらその書類を作ることになります。

銀行がコンサルを送り込むのは、この3つが多いように思います。そのほかにも事業承継・M&Aなどの場面でもコンサルの紹介はありますが、その場合には会社側からの要請の色も強いので、「コンサルタントが送り込まれる」印象は受けづらいかと感じます。

銀行からコンサルタントが送られてきたら、どれくらい「ヤバい」のか

深刻度合いは企業によって異なります。上述の通り、銀行の思い過ごしだったということもありますし、返済を待ってもらう(「リスケ」といいます)が必要な場合もありえます。上でいえば、1, 2, 3の可能性があるということですね。

ただし現実には、1の場合はあまり考えられません。銀行員は保守的な生き物とはいえ、何もなければ身銭を切ってわざわざコンサルタントを送り込みません。何らかの異変を察知していて、それが返済に影響を及ぼす(つまり経営破綻がチラつく)可能性を考えているわけです。銀行員もプロなので、その予測が大外れすることは稀です。基本的には、コンサルが送られてきたなら何らかの問題があるケースが多いです。

もっとも、問題は少なからずあるとはいえ、手遅れなケースはごく一部です。手遅れなケースとは、「再建の余地は全くないから、この瞬間に会社を解散させて債権を整理しよう」などといった状態。そんな場合には、銀行はコンサルタントをわざわざ送り込まず、債権回収を粛々と進めます。逆に言えば、銀行は諦めていないから、コンサルタントを送っているんです。

冒頭の質問に答えるなら、銀行からコンサルタントが送り込まれても、経営を諦める段階には至っていない状況だと考えられます。多くの場合には手遅れではありませんので、絶望せずに経営改善に取り組みましょう。

対策は早めに、舵取りは自らの手で

先ほどリスケの話をしましたが、世の中を見渡すと、結構な数の会社が実はリスケしています。リスケをしたからといって、リストラは全てのケースで必須というわけではないですし、風評が広まったりする心配も(それほど)ありません。リスケは最悪の事態ではなく、最悪の事態を防ぐための手段の1つです。

ただ、諸々の自由は制限されます。新規の借入はかなり難しいので手元の現金でやりくりしなければなりません。コンサルタントの手腕や相性にもよりますが、大規模な投資はしばらくは難しいでしょう。役員報酬の減額や従業員の昇給見送りは十分にありえます。

リスケまでいかなくとも、銀行から来たコンサルタントに指示されることは気持ちの良いことばかりではないと思います。銀行が指定するコンサルタントともし相性が合わないと、気分は悪いし、何よりも成果につながりません。

だから、窮状に追い込まれる前に、対策は早めに打った方が良いです。なお、万が一リスケが必要な経営状態になりそうなら、対策は尚のこと早い方が良いです。不安が少しでもあるなら、現状分析や投資計画を見直すのが良いと思います。

最後に宣伝です。銀行からコンサルタントを送り込まれるような事態を避けるために、財務状況、特に現金の動きには普段から注意を払っておきましょう。もちろん、単に注意するだけではなくて、その注意をどのようにして施策に繋げていくかも重要です。現状分析や施策提案、銀行との付き合い方などの助言も含めて、農業経営を良くするための方策を一緒に考えましょう。

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